読了時間の目安:
約10分
株式会社芳川鉄工所
(山口県光市)

芳川さん、玉尾さん
株式会社芳川鉄工所は、1960年創業。製造設備の部品製作・部品補修を中心に、製缶や機械の加工、産業機械装置の設計製作を行っている。
従業員数は22人(2026年9月現在)。年齢層は20代から70代まで幅広く、地元で長く働きたい人材の採用・定着にも力を入れている。女性従業員も多く、フォークリフトを扱う現場業務などでも活躍している。
今回は、代表取締役の芳川靖平さんと、総務担当課長の玉尾朋子さんにお話を伺った。
健康経営宣言をきっかけに、健康診断・健康カルテを活用し、従業員の健康状態を継続的に把握している。治療と仕事の両立支援にも早くから対応している。
まず、健康経営の取組みと、治療と仕事の両立支援についてお話を伺った。
協会けんぽの“企業健康カルテ”を活用して早期発見・早期治療につなげています
「2019年頃から健康経営に取組み始め、健康宣言を行いました。当時は、何から始めればよいのか手探りの状態でしたが、協会けんぽからの情報や案内、そして無料で提供される“企業健康カルテ”をきっかけに、従業員の健康状態や運動習慣・食習慣・睡眠習慣・飲酒習慣などを知り、対策に取り組むことで、2021年に“健康経営優良法人(中小規模法人)”の認定を受けました。その後も毎年認定を受け、2023年以降は3年連続で“健康経営優良法人(ブライト500)”の認定(2026年は“健康経営優良法人(ネクストブライト1000)”)、地域においても2022年に山口県から“やまぐち健康経営認定企業”の認定を受けています。」
「協会けんぽから毎年無料で提供を受ける“企業健康カルテ”は、会社全体の健康状態がグラフで分かりやすく示されます。業界平均や山口県内との比較もできるため、当社の課題を把握し、健康づくりに取り組むことができました。メタボリックシンドロームなど、気をつけなければならない点も分かり、会社として何を改善すればよいかが具体的に見えるようになりました。経年での変化が見えるので、改善の成果がわかってありがたいです。」
「健康診断は、これまで従業員自ら、個別に健診機関に行く方式でしたが、移動の負担を減らすため、会社に来てもらう健診車による全員実施を、今年の秋から予定しています。皆が受診しやすい環境を整えることが大切だと考えています。健康診断の結果で再検査が必要となった場合には、その費用を会社が負担し、受診を促しています。本人から家族にも案内できるよう、異常があった項目に関連する健康リーフレットを給与明細に同封しています。実際に、健康診断の結果を受けて早期に受診し、病気の早期発見・早期治療につながった事例もありました。健康診断で気になる結果が出た時には、まず病院に行ってもらうようにしています。費用面が受診のハードルにならないよう、再検査の費用を会社が負担することは大事なことだと考えています。再検査で結果を早く知ることで、従業員本人だけではなく、従業員の健康を大切にする会社側にとっても安心につながります。」
本人・医療機関・会社が連携して治療と仕事の両立を支えています
「健康経営に取り組む際、私(玉尾さん)が健康経営担当者の任務を受けて、“両立支援コーディネーター”の研修を受け修了証を取得しました。ほどなくして、実際に従業員ががんに罹患しました。研修内容を生かし、医師の意見書や診断書をもとに、本人と医療機関、会社の三者が連携しながら支援を行ってきました。本人の同意を得て医師に勤務内容や有給休暇の残日数などを伝え、どのような点に気をつければよいかを書いていただくなど、研修内容を生かしサポートを行うことで、職場復帰後の仕事と治療の両立がスムーズに進みました。これまで2名の両立支援を行い、実際、治療を終えて今も元気に働いている方もいます。大切な従業員を失わずに済み、本当に良かったです。」
全員受検を目指し、柔軟にストレスチェックを実施。高ストレス者には外部相談窓口を案内している。
次に、ストレスチェックの取組みと地域産業保健センターの活用についてお話を伺った。
柔軟なストレスチェックの方法で、全員受検を目指しています 「健康経営の取組みの流れで、3年ほど前からストレスチェックを実施しています。健康診断もストレスチェックも毎年全従業員が受けています。基本的にはWEBで実施していますが、スマートフォンの操作が難しい高齢の従業員には紙で対応するなど、一人ひとりに合わせて全員が受けられるよう工夫しています。毎年実施しているので、従業員も慣れてきたと思います。」
ストレスチェック後の相談体制も整備しています 「ストレスチェックの結果について、本人から相談を受けることもあります。高ストレスだったと本人自ら話しに来ることもあります。高ストレス者には、まず医師による面接指導を勧めますが、難しい場合は、他の窓口として外部相談窓口を紹介しつなげるようにしています。外部相談窓口はオンライン面談や電話相談も可能です。集団分析結果も確認していますが、会社全体として大きな課題が見られる状況ではありません。それでも毎年確認しながら、変化がないか注視しています。」
地域産業保健センターを活用し、従業員の多くが保健指導を経験したことで、今後、ストレスチェック後の高ストレス者への医師による面接指導にも活用したいと思いました
「昨年、健康診断結果に基づく医師の意見聴取で、初めて地元の“下松地域産業保健センター”を利用しました。保健師でもあるコーディネーターからの報告では、登録産業医からは就業上の措置が必要ないとのことで安心しました。ただ、健康診断結果が気になる従業員が何人かいたので、コーディネーターに登録保健師として当社へ来てもらい、保健指導を行いました。健康診断結果の見方や生活習慣の改善について、個別に助言が受けられました。その後、メンタルヘルスに関する個別相談にも対応してもらいました。無料でここまで対応していただけるのはありがたいです。従業員の多くが、今回、保健指導を経験したことで、今後、ストレスチェック後の高ストレス者への医師による面接指導の際にも、この地域産業保健センターを活用できると思いました。」
社長からの日常的な声かけや手作り野菜の差し入れ、誕生日ランチ会など、相談しやすい雰囲気により、心身の不調を早期に把握できる職場づくりを進めている。
最後に、従業員の健康意識を高めたり、コミュニケーション活性化に関する様々な取組みについてお話を伺った。
社長からの日常の声かけと共に食生活を支援しています 「体の健康は検査結果で分かりますが、心の不調は健康診断のように見えにくいため、私(芳川さん)からは、従業員に対して、『眠れているか』、『きちんと食事をとれているか』といった何気ない日常の声かけを欠かしません。若い従業員からカップラーメンばかり食べていると聞けば、『野菜も食べないとだめだよ』と声をかけ、自ら育てた野菜を持ち帰ってもらうこともあります。会社の敷地内には畑があり、季節によってはトマトやキュウリ、トウモロコシなどを栽培しています。」
「また、全従業員に対して、健康習慣に関するアンケートを、健康経営に取組み始めてから毎年継続して行っています。運動、睡眠、飲酒、食生活などの生活習慣に関するデータを集め、結果を全従業員にフィードバックしています。結果内容を踏まえて、運動や睡眠、メンタルヘルス、ハラスメントなどをテーマにした研修も実施しています。昨年は、“ストレスと上手に付き合うストレスマネジメントテクニック”のタイトルでメンタルヘルス研修を実施しました。」
相談しやすい雰囲気づくりと社内コミュニケーションを大切にしています 「相談しやすい雰囲気づくりと社内コミュニケーションを大切にしています。当社では月に1回、誕生日会を兼ねたランチ会を実施しています。会社側でお弁当を用意し、該当月の従業員の誕生日をプレゼントと共に皆でお祝いしています。社長からの話や会社からのお知らせ、動画を使ったミニ研修なども行っています。動画を見ながら、気づいたことや意見を皆さんから出してもらうことで、ちょっとしたことでも話せる雰囲気を大切にしています。」
「また、匿名で意見を出せる“意見箱”も設置しています。会社入口の公道上のカーブミラー設置など、従業員から出た意見をもとに改善につなげた例もあります。コロナ禍で中断していた社内イベントについても、再開を検討しています。以前は花見やバーベキューなどを行っており、従業員同士の交流の機会になっていました。再開にあたっては、従業員の生活パターンの変化にあわせて、参加しやすい時間帯や負担の少ない運営方法を考えています。仕事が終わってから改めて集まるのは負担になる人もいます。早めの時間から始めたり、飲み物や食べ物を持ち帰れるようにしたり、無理なく参加できる形を考えています。」
今後も従業員の声を聞き、健康で働き続けられる取組みを継続して行っています 「当社は、現在、ほとんど残業はありません。徐々に時間外労働を減らしてきました。これらの取組みは、大きな制度を一度に整えるのではなく、従業員の声を聞きながら、できることを一つずつ積み重ねてきたものです。治療と仕事の両立支援、健康診断後のフォロー、ストレスチェック後の相談体制、日常的な声かけなど、社内コミュニケーションの場づくりを通じて、今後も皆が安心して働き続けられる職場づくりを進めていきます。」
【取材協力】株式会社芳川鉄工所
(2026年9月掲載)